『暴れん坊撫子』上(ポップンミュージックSS)

2012年1月3日
拙作(ポップンミュージック)

タイトルからお分かりいただけます通り、
あの著名な時代劇のパロディっぽいお話です。
わりとやりたい放題感が満載ですが、
その辺はいつも通りっちゃいつも通り。
(全3話の1話目になります。)


ポップンミュージックSS
暴れん坊撫子・上

 むかしむかし、あるところに

 とても活気にあふれた城下町がございました。

 国を治めるお殿様は、たいそう芸能を好まれており

 町は日夜、多くの「みゅーじしゃん」や
 「だんさー」などで賑わっております。

 これは、そんな歌と踊りの盛んな国に生まれた

 一人の女の子の、おはなしでございます。


 歌った後は麦茶に限る。氷室から取り出してきたばかりの、きんきんに冷えた氷を浮かべた特製麦茶。この茶店の人気の理由の一つだろうが、もちろんお菓子も非常に美味しい。
「はいお待たせ、栗かのこね。」
「待ってましたー!」
 看板娘のお姉さんが持ってきてくれたのは、大好物の栗かのこ。麦茶で乾いた喉を潤した後は、これで糖分補給というのが定番の締めくくり。もちろん、渋い抹茶との組み合わせだ。
「本当、カノちゃんは栗かのこ大好きね。」
「そりゃ……むぐむぐ……もう……んぐんぐ……美味しいもん……
「ふふ、食べながら無理に喋らなくてもいいわよ?」
「うん。」

 茶店の軒先で、長椅子に腰掛けた奇抜な着物の少女。左半分は黄一色で逆側は緑一色、髑髏や記号の模様が奇抜さを強めるのに一役買っているようだ。裾は短く切り詰められていて、南蛮渡来の「しまたいつ」に足を通している。短めに切り揃えられた髪は襟足が刈り上げており、顔立ちが整っていなければ男児と間違われそうですらある。

 少女の名は鹿ノ子。ただしそれは、彼女自身が名乗る仮の名前。

 半年ほど前に突然「すとりーと」に現れた彼女は、その力強い歌声で道行く人を魅了し、今では皆に一目置かれる存在となっていた。他の「みゅーじしゃん」のように頻繁に活動しているわけではないが、定期的に城下町に現れては、その歌声を披露している。

 渋いながらも深い味わいを持った抹茶をゆっくりとすすり、鹿ノ子はほっと一息ついた。
「やっぱりおコンちゃんところの栗かのこが一番美味しいね。」
「あら、そんなに誉めてもおまけは出ないわよ?」
「えー、お世辞じゃないんだけどなぁ。」
 鹿ノ子が生まれ育った「あの場所」でも、これだけの和菓子を作れる職人はそうそういないだろう。町には豊かな才能を持った人が、沢山いるということだ。
「お、鹿ノ子ちゃん来てたのかい。」
 そこに現れたのは、法被と鉢巻が勇ましい、いかにも商売人風の初老の男性だった。
「あ、こんちわ大将。」
 この茶店の隣りに居を構える、酒屋の店主。鹿ノ子の歌をたいそう気に入り、この茶店に連れてきてくれたのも彼だった。
「ちょうど良かった。挨拶もせずにいなくなるのも良くないとは思ってたんだ。」
「いなくなる……って?」
 突然の告知。一体どういうことなのか。
「いやねぇ、ちょっと事情があってな、店を引き払うことになったんだよ。俺もそろそろ隠居し時だし、南町の方の長屋でのんびり暮らすことにするよ。」
「でもそんな……
 何かがおかしかった。1ヶ月前に会った時は、いくつになっても商いが楽しくて仕方ない、だから俺は生涯現役だと、そう嬉しそうに話していたのに。

 何かがあったのだ、鹿ノ子が町から離れている間に。

「そうだそうだよ、おコンちゃん。荷物運ぶのにちょっと大八車を借りたかったんだよ。」
「あ、ああ、そうだったの。ウチは今日いっぱいは使いませんから、裏から持っていってください。」
「あいよ、わかった。助かるよ。」
 笑いながらおコンに挨拶して去っていく大将の背中は、どこか寂しそうだった。

……ウチだって……他人事じゃ……

 ぽつりと漏らしたおコンの言葉を、鹿ノ子の耳は聞き逃さなかった。
「おコンちゃん、いま何て言ったの。」
「え!? いや、他人事だって言ったのよ、ウチは全然……
 じっと鹿ノ子に見つめられて、憂いを含んだ目を少し逸らすおコン。鹿ノ子はその視線を逸らさず、まっすぐにおコンの顔を見据え続けた。
「ウソ、他人事じゃないって言ったよね。」
……そ、そんなこと……
 おコンの美しい栗毛の髪から覗く狐の耳が、緊張のためにピンと張り詰めている。彼女のような獣の物の怪は、感情が耳や尻尾に現れやすいのだ。平静じゃないということは、つまり——
「お願い、ホントのこと話して。」
……仕方ないわね。」
 そのまっすぐさに勝てなかったのだろう、おコンは重い口調でぽつぽつと語り始める。
「実はね、ウチも店を畳むことになりそうなの。」
「やっぱり……でも何で?」
「大きな声じゃ言えないんだけど……浜野屋の符左衛門さんに声をかけられたの。引越先とか引越に必要なお金は用意するから、立ち退いてはもらえないかって。」
「そんな乱暴な……
 空き地などいくらでもあるのだから、何も住んでいる人のいる場所を求めることは無いだろうに。おまけに城下の住人は基本的に素朴な人ばかりだ。豪商に頭を下げられて、なお頑固に断り続けられるような強気な人物はなかなかいない。
 だがしかし、それを考慮に入れたとしても、やはり何かおかしくはないだろうか。この茶店はおコンが病気の父親に代わって切り盛りしてきた大切な店だ。そう簡単に明け渡すとは思えない——

「おうおう、じゃまするよ。」

 おコンの話を聞きながらそんなことを考えていた鹿ノ子の耳に、やや高い壮年の男の声が飛び込んでくる。
……浜野屋さん。」
 店先に現れたのは黒い色眼鏡をかけた鳥の物の怪だった。

 この城下町には少なからぬ数の物の怪が暮らしており、中には人間相手の商売に成功して財を為している者もいる。この浜野屋符左衛門もその一人。元々は、北方の開拓地よりも更に北の地から海を渡ってやってきた旅の一座の座長だったらしいが、それで築いてきた人脈と情報力を生かして隠居後に交易問屋を始め、今では城下でも有数の豪商となっていた。

「おコンちゃんねぇ、例のお話、そろそろ決着を付けないとダメだと思うんだが?」
 色眼鏡の奥で、鳥特有のギョロリとした瞳が光る。
「で、でも、急に二十両ものお金なんて……
「貸したもんは貸したもんだ。私が必要になったから返してもらう、何かおかしいかい?」
「だけど……おとっつぁんの具合が悪いから、返すのはゆっくりでいいって……そう言ってくれたのは、浜野屋さんじゃ……。」
 反論を絞り出すのがやっとのようで、おコンの声はどんどん小さくなっていった。
「おお、おお、そうだそうだ確かに言ったねぇ……
 そんな萎縮するおコンを前にして、浜野屋は好々爺じみた笑みを一瞬浮かべてみせるが——
「だけどねぇ!!」
——次の瞬間、短い足を大きく踏み鳴らして怒気をはらんだ絶叫を発する。
「私が返せと言った時に全て返す!! 借りたモンにそれを拒否する権利はないんだよ!!」
「そんな……
 分割で返す約束だったところをいきなり一括で返すよう要求するのは、金の貸し方としては決してフェアでは無い。しかし、借りている負い目もあるのだろう、おコンは不条理な要求に対して強く言い返せないようだった。
「返せないなら約束に従ってもらうよ……さぁ、引越のお手伝いをしてあげよう。」
 浜野屋は下卑た笑みを浮かべると、後方へ向けて手招きするように羽を揺らめかせる。
「お願いしますよ、ミスター・ファットボーイ!」
 背後に控えているのは、身の丈が六尺半はあろうかという大男。まるで豚のように肥えた体型をしており、顔付きも豚にそっくり——というより豚そのもの。どうやら豚の物の怪らしい。物の怪の集まる町とは言え、さすがに三人も集まると、光景がある種の異様さを帯びてくる。
「….Hey,Master , June be burn Tongue?(……だんな、片付けていいのかい?)」
 奇怪な言葉遣いから鑑みるに、海の向こうからの流れ者のようだ。浜野屋も元々は同じような境遇なので、意志の疎通は出来るということか。
「ええ、手始めにその辺の長椅子から始末しましょうか。」
 しかし浜野屋は特別な言葉を使うことも無く、普通に意志を口にした。豚男がそれに頷いたところを見ると、どうやらこの国の言葉も通じるようだった。
「や、やめてください!!」
 大事な店の一部に手を伸ばさんとする豚男を、果敢にも止めに入るおコン。丸太のような脂ぎった腕にしがみついて、その動きを邪魔しようとするが——
「Ted assume yaw,little lady!(邪魔すると危ねぇぞ、娘!)」
——豚男が軽く腕を振るだけで、たまらずに尻餅をついてしまう。品の無さそうな風貌のこの豚男、意外にも力の加減はわかっているらしい。本気で振りほどかれたなら、おコンは重傷を負わされていた可能性もある。
「危ないのだから黙って見ていなさい。さぁファット先生、お早く……
 浜野屋の指示で長椅子に手をかけようとする豚男。だが——

「黙って見てりゃ……

——それを遮るように、その首筋に棒状の油紙が押し当てられた。

……随分とやりたい放題やってるじゃん。」

 それは、鹿ノ子愛用の番傘だった。長椅子から立ち上がり黙ってやり取りを聞いていた鹿ノ子が、いつの間にか豚男——ファットのすぐ目の前に動いていたのだ。その番傘の先端は、まるで刃物を突きつけるかの如く、彼の喉元に向けられている。
「な、何ですかあなたは……酔狂な町娘の出る幕じゃありませんよ!!」
 目的達成への第一歩を邪魔された浜野屋は、ヒステリックな怒鳴り声を上げて地団駄を踏む。しかし直接の邪魔をされたファット本人は、特にペースを崩すこともなくゆっくりと鹿ノ子の方へ顔を向けた。二人の体格の差は童子と大人ほどもあり、鹿ノ子は顔を上向けなければファットと視線を交錯することも出来ない。もっとも、その目に怯えの色は全く無かった。吊り目気味の瞳は鋭く細められ、殺気とすら言える強い敵意を放っている。先程までの呑気とすら言える穏やかな雰囲気からは想像も付かない、あまりにも攻撃的な表情だった。
「hum…」
 値踏みでもするかのように、鹿ノ子を見下ろし眺めるファット。程なくしてその口元が醜く歪む。それはさながら、噛み応えのある大きな骨を与えられた犬のようだった。
「Know Alt Tacker what’s may Oak Ax….」
 何を言っているのかはわからない。しかしこれまでのファットの行動や、その放つ雰囲気から、鹿ノ子は二つの事象を感じ取ることが出来ていた。

 ひとつ、この男の本質は暴漢というよりは武人に近いということ。一方的に力を振るうよりも、力をぶつけ合うことを好むと見える。浜野屋の悪事に手を貸してはいるが、おコンに怪我をさせぬよう加減をしていたところからも、そう思えてならないのだ。

 そしてもうひとつ。それゆえに今この男が発した言葉の大意はほぼ間違いなく——

——「お前……できるな?」

 思わず、口元が緩んだ。傍目から見れば、喧嘩屋の下卑た笑いのようでもあっただろう。この男に対する敵意はそのままに、しかし、こみ上げる高揚感は抑え切れなかった。

 それが合図のように、両者はゆっくりと自らの武器を振りかぶる。鹿ノ子は番傘を肩の後方へ引き戻し、ファットもその拳を引き絞っていく。
「え……っ?」
「何を……!?」
 当然、それは二者だけの暗黙の合意。状況を見守るだけだったおコンと浜野屋は、その唐突な行動に疑問符を浮かべるが、もはや事は動き出していた。番傘と拳がぶつかり合わされた直後、鹿ノ子とファットは弾けるように互いの間合いを離す。
……ふぅん、ずいぶんと丈夫なゲンコツだね。」
 剛拳を前にびくともしない番傘の方がよほど丈夫だとも考えられるが、持ち主である鹿ノ子にしてみれば、この結果は予想外だったらしい。当然、ファットの方も相手の得物を潰したつもりでいたようで、鹿ノ子の番傘を映した瞳を色眼鏡の奥で見開いていた。
「面白いなぁ……うん、面白い……!!」
 鹿ノ子は愉快そうに叫ぶと、今度は正眼に番傘を構えた。対するファットも、腰を落として拳を低い位置で強く引く。自らの全力を乗せた一撃をぶつける、互いにそれだけしか考えていないのだ。肉の鉄槌をもろともせぬ番傘と、その業物にさえ砕かれぬ鋼の拳の睨み合い。先に動けば負けるか、或いは先手必勝か——どちらにしても、一撃を受けた方が確実に沈む。

 緊迫した空気が場を覆っている、そんな拮抗を打ち破ったのは思わぬ第三者の声だった。

「まてまてまてぃっ!」

 茶屋の向かいの屋根から響いたその声の主は、ちょうど鹿ノ子とファットの中間点に「降り立つ」と、その両手をそれぞれに突きつける。片手には十手、逆の手には提灯。この城下町に住む者なら、その出で立ちで瞬時に人物を判断出来る、わかりやすい目印だ。
「この喧嘩、おいらが預かった!!」
 紺地の法被を纏った岡引。犬の物の怪であるらしき彼は、その可愛らしい顔付きに見合って体自体は非常に小柄。身の丈は鹿ノ子にすら劣るほどだが、その振る舞いは堂々たるものだった。
「往来での喧嘩はご法度だよ、御二方。今すぐ得物を収めねぇと、今宵は座敷牢でおねんねすることになりますぜ?」
 両者を一度ずつ横目で睨み付けた後、少し離れたところに立ち尽くしている浜野屋に視線を向ける。目まぐるしく移り変わる状況についていけないのか、その表情には明らかな困惑の色が現れていた。
「浜野屋さんよ……何とも面倒くせぇ話の最中で面目無ぇが、ここはおいらに免じて、お引き取り願えますかね。」
……ふん、いいでしょう。」
 岡引が出てきた以上、事を荒立てれば同心も動くはずだ。それは得策では無いと踏んだのだろう、浜野屋は早々に踵を返した。
「いいですか、おコンちゃん。次は七日後に来ます。それまでに二十両、耳を揃えて用意しておくこと。さもなくば今度は、正式にお奉行様にお裁きをお願いしますから。」
「そ、そんな……
 取り立て方が穏やかで無いとは言え、借金は借金だ。もしも奉行所の裁きを受けることになれば、おコンの方が不利になってしまうだろう。
「出来ないのなら、借金のカタにこのお店を差し出すことです。そういう約束だったでしょう?」
 ましてこの代替条件が用意されている状況である。奉行も浜野屋の考えを支持してしまうかもしれない。奉行の前に出ている時だけ、借金を踏み倒される哀れな商人を演じることだって可能なのだから。
「さぁ帰りますよ、ファット先生。」
「…Shit,Diva now Oak Zee car later.(……チッ、これからだってのにな。)」
 舌打ちしながらもファットは拳を収め、浜野屋に従って店に背を向けた。が、すぐに立ち止まって鹿ノ子の方へ振り返ると、口元を歪ませながら握り拳を鹿ノ子に向けて見せた。その親指を下に向け、軽く下方へ振り下ろす。きっと彼の出身地での身振り手振りなのだろう、その意味するところは恐らく——

——「次は地獄に落としてやる」って?

 どこまでも好戦的な男だ。もっとも、機会があれば正式に再戦したいと言ってきたということは、鹿ノ子の腕前に一目置いているということ。悪い気分がしないとまではいかないが、それなりの応答は返してやらないと不義理かもしれない。

——「浄土送りはあんたの方だよ。」

 睨みがちに視線を合わせつつ、人差し指で上空を示して見せる。きっと誰が見ても憎らしく思えるような、小馬鹿にした笑みを浮かべながら。

 地獄などという恐ろしい表現は、身振りであっても使わない。
 それが、撫子の持つべきこだわりである。

 結構結構と言わんばかりに含み笑いを漏らしたファットは、今度こそ踵を返し、浜野屋の後を追って去って行った。嵐が去ってやっと緊張が解けたのだろう、おコンはへたり込むように長椅子に腰を落とした。涙こそ出ていないものの、疲れきった表情で俯いて、溜息を吐き出している。
「ごめんよおコンちゃん、駆けつけるのが遅れちまって。」
「あ、気にしないでタロウちゃん……来てくれてありがとう。」
 タロウはおコンの恋人である犬の物の怪であり、奉行所からも一目置かれた優秀な岡引だ。仕える同心こそ明らかになっていないものの、関わる事件の内容から、かなり腕利きの同心が背後にいるのは間違いないと噂されている。
「私としては、あとちょっと待って欲しかったなぁ。」
「またそんなこと言ってカノちゃん……もうあんなことしちゃダメよ?」
 おコンとしては、やはり女の子である鹿ノ子が荒事をするのは心配なのだろう。当の本人はどこ吹く風だが。
「でも浜野屋ってあんなひどい奴だったっけ? 前に会った印象じゃ『呑気な爺ちゃん』って感じだったような……
「ええ……もう何年も前におとっつぁんが病で臥せった時に、利子とか気にしなくていいからってお薬のお金を貸してくれたのが浜野屋さんだったの。その時は本当に優しくしてくれて、まさかこんなことを言ってくるなんて……
 人の心など時間が経てば変わるものだと言うが、いくらなんでも豹変しすぎでは無いだろうか。初めから演技だったという可能性もあるが、それにしては取り立てに来る時期が遅すぎる感じがする。この手の詐欺は、貸して間もなく仕掛けるのが定石だというのに。そして——
「ねぇ、タロウ。ひとつ聞きたいんだけどさ。」
「何だい?」
「浜野屋って材木問屋だったよね。」
「ああ、お上御用達のでっけぇ材木屋だよ。お寺さんとかを建てる時にもお声がかかるらしいな。」
 この点がもっとも腑に落ちないのだ。それほどの豪商が、何故二十両程度の借金にこだわるのか。今すぐ金が必要なら、他に工面する方法はいくらでもあるだろう。それも二十両などという安価では無く、その何十倍もの資金をだ。そう考えると、浜野屋が本当に欲しているのはおコンに貸した金では無く——

——店……いや、土地の方ってことか。

 しかし材木問屋だけが動いたところで、建材は集まっても建物は立たない。そもそもに浜野屋だけに焦点を当てても、理屈が通らない部分が多すぎる。

 つまり、今のところ出せる結論は一つ。

——まだ裏があるみたいだね、この話……

「おコンちゃん、栗かのこ御馳走様。お代置いていくね。」
 未だに暗い表情で座り込むおコンの脇に、鹿ノ子は貨幣を数枚置く。
「あ、帰るのね。たぶん次に来る時は、お店ももう……
 鹿ノ子はだいたい月に一度しか町に現れないので、このまま行けば七日後に無くなるこの茶屋とは、これでお別れになってしまう。しかし鹿ノ子は、そんなおコンの感傷的な言葉に、首を横に振って見せる。
「ううん、なくならないよ。」
「え……?」
「ここの栗かのこが食べられなくなったら、私が嫌だもん。それに、おコンちゃんが悲しいもんね。だから——」

——絶対に、無くさせたりしないから。

続く